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日西経済友好会
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日西経済友好会 第48回定例会活動報告


日時:2010年05月24日(月)18:45~21:30
場所:カフェ・ジュリエ
参加者:37名(講師及びDHCの2名を含む)
講演:「スペインワインのソムリエを目指して」
  講師:櫻井一都 氏
    プロフィール:都内ワインバー他にて、バーテンダー、調理を経験。六本木「サドレル」ソムリエ、日本橋「サンパウ」ソムリエ長を歴任後に渡西。帰国後、六本木「ボデガ・サンタリタ」マネージャー兼ソムリエを経て、現在はソムリエ業の傍ら、スペインワインの素晴らしさを伝えるべく、セミナー講師他、スペインワインの普及・啓発に取り組んでいる。
   
1) 講演概要
  本日はソムリエとして、今までどのようにスペインワインに取り組んで来たかお話したい。
  平成12年の日本ソムリエ協会ソムリエ資格テストに臨んだが、それまでは、スペインワインに接したことは余りなかった。
或る時、6人ぐらいのお客様が、新聞紙に包んだワインを持参、ブラインドテイスティングをされた。
私が資格テストを受けることを、お客様がご存知であった為、私にも試すように言われた。正直な所、このワインのテイスティングをして、度肝を抜かれた。
妖艶な、色艶のある香りで、味わいの複雑さが際立っており、呆然として、何のコメントも出来なかった。
答え合わせはVega Siciliaの1970年Unicoであったが、これでスペインワインの素晴らしさに目覚め、その後は、スペインワインをもっと知りたい、分かるソムリエになりたいということを意識して仕事をして来た。
  2004年に本店がバルセローナ近郊にある「サンパウ」が日本橋に支店をオープン、ここでソムリエ長として働くことになった。ワインリストの作成からスタートしたが、ソムリエチームの認識を超えたリストで驚いた。スペインワインに関する本は殆どなかったので、止むを得ず、ソムリエチーム4人が、ネットで1本1本調べて、情報を集めたが、ソムリエ長として、現状を打破すべく、本店のソムリエに直接会うことを要請、スペイン語も出来ないのに、本店に行った。
  到着すると早速、分厚いワインリストを渡され、地下のワインセラーで、1本ずつワインリストを照らし合わせ確認して、初日が終わった。
翌日は、サックス奏者である、オーナーシェフのご主人の喧しい音で目が覚めた。ソムリエの仕事の手が空いた時は、セラーで1本1本テイスティングを重ねた。
  最初に指導を受けたのは、半円形の図で、真ん中が飲み頃、左に行く程、若くなるが、若いワインはデカンタージュして、チューリップ形のグラスを、右側の熟成物はバロン形のグラスを使いなさいということであった。
  ランチ営業が始まる前に、近くのBarでセルベサ、カラヒージョを引っ掛けて、陽気になった所で仕事に向かった。
シエスタでは、近所のショップでカバやワインを買い、テイスティング、その後、昼寝をして、21時頃から仕事をした。
仕事が引けると、オーナーシェフ夫妻他で、隣町のディスコテカに繰り出し、楽しんだが、年寄りも楽しんでおり、スペインとは恐ろしい所だとびっくりして、自分もこんな親父になりたいと思った。
  日本橋に帰って、リストの全てのワインのテイスティングをしたという自信から、心に余裕が出来た。しかし、お客様のスペインワインに対する認知度が低く、スタッフも同じで温度差を寂しく感じ、又、壁にぶつかった。
この現状を打破し、スペインワインをどうしたら知ってもらえるか、楽しんでもらえるか、ワインを扱っている方々からも教えてもらいながら考えて来た。
  その結果、本来あるべきではないが、お客様の理解しているフランスワインやイタリアワインにスペインワインを当てはめて、分かり易いように説明することを考え、赤ワインを表にして見た。フランスの場合、ボルドー、ブルゴーニュの二大産地があるように、スペインの地図を半分に割り、西と東に分けた。
ブドウ品種の名前に例えて、西の横綱テンプラニージョ、東の横綱ガルナッチャ、ここから枝分かれして説明、例えば、同じテンプラニージョでも、リオハだけではなく、リベラ・デル・ドウェロ、トロ、ラマンチャでも使われており、産地毎の特徴も説明した。
又、フランスのボルドーワインみたいなものを飲みたいというお客様には「ボルドーの場合、単一品種でなく、ブレンドしてますね。スペインでも、東部のぺネディスのように、カルベネ・ソーベニオン、メルロー他数種ブレンドしているようなものもあり、限られたテロワールで何種類かのブドウ品種をブレンドしたエレガントなタッチのワインもありますよ。」と説明した。
  お客様の年齢と熟成期間は比例するようで、若い人にはカタルニアのもの、例えばプリオラトのように若々しいフレッシュなものを、ワインをよく知っておられるご年配の方にはリオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、ラマンチャをお薦めるとお客様の好みに合うように思われる。
  醤油とテンプラニージョの合性とか、色々研究中なので、今後の成果を何れご報告したいと思う。
  ソムリエ仲間からは、上から目線で「未だスペインワインをやっているのか?」と質問されるが、私としては、そういう言葉に惑わされずに、短いながらも、スペインワインに携って、助けられた方々に恩返しをしたいと思って、今後も精進する積もりなので、宜しくお願いしたい。
     
2) 質疑応答
  (1) テンプラニージョとガルナッチャの性格的な違いはどうか?
  色で言うとガルナッチャは、やや褪せた赤で、チェリー、熟したストロベリーのニュアンスがある。テンプラニージョは紫がかった赤、黒とも言える色で、紫がかった、やや濃い色のプラム、ブルーベリーのような香りがあり、大人のスパイスのニュアンスがある。
熟成したワインを造るには、テンプラニージョが、フレッシュなもの、ロゼにはガルナッッチャが主体だが、最近はガルナッチャの土地、造り方を改良した、素晴らしいワインが出て来ており、これから益々面白くなって来るであろう。
ガルナッチャの場合でも、産地によって個性が異なり、枝分かれして、渋味、酸味、香りを細かく説明、産地の振り分け、熟成の振り分けを考えて選んでいる。
     
  (2) スペインでしか、使われていない品種は?
  ガルナッチャは原産はスペインだが、フランスに行くとグルナッシュと言われており、この方が日本では認知度が高い。しかし、私は、胸を張って、原産地はスペインと言っている。テンプラニージョもスペインを代表する黒ブドウである。
     
  (3) それだけ良いものがあるのに、スペインワインの評価が低いのは、ルイヴィトンとロエベのような固定観念の問題か?
  やはりブランド志向の問題である。この数年、地道な活動をしながら、何か起爆剤がないか考えて来たが、レストラン、業者等、売り手側でスペインワインの素晴らしさを自信を持って言える人間をもっと輩出する必要がある。
     
  (4) ワインソムリエは何人位いるのか?免状はあるのか?テストは難しいのか?
  フランスワインのソムリエがメインだが、ソムリエ資格保持者は何千人もいる。
国際ソムリエ協会があり、その傘下に日本ソムリエ協会がある。ソムリエ資格テストがあり、受験にはレストランでの就業経験が5年必要、それ以外はワインアドバイザーとなる。資格を保持していても、働く場が少なく、実際にはソムリエとして働いていない人が多い。免状とソムリエバッジがある。
私は独学で実地で勉強、努力・苦労したとは思っていないが、好きだからやって来ており、そういう人間がソムリエ業を継続出来ると思う。
     
  (5) テイスティングは、本当に当てられるのか?
  実際には殆ど当てられない。ここだけの話だが、半分以上はハッタリである。資格の取得には、筆記テストとテイスティングがある。公開決勝で、200人位の前で、スペインワインのテイスティングをしたが、自分は偶々全部当たった。
テイスティング能力は、味ではなく、見て、香りを嗅いだだけで7割が分かり、後は味で確認するというものである。自分の金を使ってどのぐらい飲んだかが大事だと思う。
     
  (6) 臭覚、味覚は生まれ付きと思うが、タバコはそれを衰えさせるか?
  私は、22歳でやっとタバコを止めれたが、その時に、教えを受けていた銀座のワイン店主に何故止めたのかと言われた。日常の生活から外れると、舌の感覚が鈍り、テイスティング能力が鈍ると言われた。
ということで、自分はタバコを気にしていないが、真面目にテイスティングをしている時にタバコの香りが来ると、やはり気にはなる。
     
  (7) スペインワインプロデューサーから「昔、ボルドーで病害発生、ブドウが全滅したが、スペインからの輸入で凌ぎ、ボルドーワインの今日がある」、又、「スペインからの輸入ワインを60-80%ブレンドして輸出している」と言われた。価格がボルドー経由となると何倍にもなるが、ワイン業界では、輸入ワインのブレンド表示をしないで良いのか?(イタリアでも同様と聞く。)
  事実としても、それを大っぴらにすれば、収拾がつかなくなり、消費者を騙すことでもあり、いけないと思う。しかし、歴史あるリオハでも以前、出所不明のブドウを使用した悪い歴史があり、網掛けをしたり、防止努力して来ているが、スペインには、根底の部分で何か信じられないものがあるのかも知れない。
ブレンドしたものを飲んでも分からない。それが分かったら、逆にワイン業界は危ないと思う。
     
  (8) スペイン大使館ではキャンペーンをバックアップしているか?
  言い難いが、余りイベント力がないと思う。講師が、スペイン大使館からの依頼原稿(「スペインブドウ品種の魅力」)に基づいて、そのまま説明しており、何時も同じ内容でつまらない講演が多い。
2008年にスペインセミナーの依頼を受けたが、今日と同じように、筋書き無しに自分流でやって、反響が良かった。
今年も担当するが、ソムリエから見たカバの選び方、味わい方を話したいと考えている。
     
  (9) ブレンドのことは、寧ろ本当のことを言ってスペインワインをPRしてはどうか?フランスのグルナッシュと同じようなことがイタリアでもあるのか?
  もちろん、ブドウが外に出て行って、その土地に根付き、その産地の名前で売られていることはあるが、その国の法律で売られており、違法かどうかは別問題で、余り突っ込んでネガティブに捉えて、価値を落としても、ワインを楽しめないのではないか。
     
  (10) 30年前に甲州からスペインに来た業者が、スペインワインをバルクで買って甲州ワインとして売っていると言っていたが本当か?
(作っているブドウの量よりワイン製品の量の方が多い。)
  甲州ワインとして胸を張って輸出しており、現在では、大分変わって来ていると望みたい。
何年か経って、「そういうこともあったが、今ではこうだ」というようなプラス思考が良いのではと思う。
     
  (11) 「ワインは旅しない」という言葉があるが、産地で飲んだ方が美味しいのか?
  現地で飲んだ方が美味しいが、実際に自分が持ち帰ったという感動があり、余り気にしない方が良いと思う。
     
  (12) スペインはワインでもオリーブ油でもマーケティングが下手だが、プロモーション方法として、どんな点を工夫したら良いか?
  大使館商務部は、産地名、ブドウ品種名でマーケティングをしているが、携わっている人やジャーナリストにしか分からない。オリーブ油も同じだが、消費者の目線、即ち味わいで説明するべきである。スペインは自分が一番と思っているのか、産地、品種だけを言うので、興醒めしてしまう。
お客様にどんなものを飲んで欲しいのか、例えば、夕食でスッキリしたものを飲みたい時に、何を選ぶか、そういう配慮が足りなくて逆になっている。
もっと、味わいでPR、タイプの特徴を強調すべきである。
     
  (13) 皇太子殿下が1992年のセビリア万博に見えて、今までスペインワインを飲んだことがないが、フランスワイン、イタリアワインより美味しいと言われた。殿下のお名前を出すのはどうかと思うが、第三者の著名人によるPRは効果あるのではないか?
  間違いないでしょう。
     
3) 概況コメント
  日本におけるスペインワインのソムリエ第一人者としての経験談、裏話をユーモアを交えてお話頂いたが、ワインの楽しみ方、ワイン業界の実態がよく分かった。
  講演後の懇親会では、DHC特別価格での提供のリベラ・デル・ドゥエロD.O.認定、テンプラニージョ100%の「セパ・ガビラン2007」(上海万博スペイン館でも使用中)を楽しみ、又、3本寄贈頂いた「ペドロサ・レセルバ2001」(同じワイナリーのもので、テンプラニージョ90%、カベルネ・ソーヴィニオン10%)の試飲も楽しみ、大いに盛り上がった。
     
    (文責 清水)




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