日本とスペインの経済的架け橋
日西経済友好会
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日西経済友好会 第59回定例会活動報告


日時:2012年12月03日(月)19:00〜21:30
場所:カフェ・ジュリエ
参加者:41名(講師含む)
1)山田彰氏(外務省中南米局長)  講演
2)概況説明
   
1) 講演:山田彰氏(外務省中南米局長)
  「スペインと中南米・・・経済からサッカーまで」
   
  講演概要
  1. 「中南米情勢」
  - 中南米は、歴史的に振り返ると、日本とは移住者という関係が深かった。
1970年までは、日本のナショナル・プロジェクトがブラジルを中心に展開、日本企業も進出した。(例えば、ブラジルのセラード開発は世界の農業開発の歴史に残るプロジェクトである。)
1980年代は、債務危機、ハイパーインフレ、クーデターなど民主化を取り巻く諸問題が発生、多くの日本企業が撤退、1990年代は調整期となり、ブラジル(レアル・プラン)など経済立て直しが行われたが、一方、日本は失われた時代に入った。
  - 1990年代に入ると多くの国で民主主義が定着、更に21世紀はマクロ的に見ると経済は非常に発展、政治的にも安定して来た。
中南米全体では、2004年以降、リーマンショック後の2009年を除いて、4-6%の高い成長率をキープしており、2001年からの10年間でGDPは、約2.5倍に伸び(ASEANの約2.5倍)、一人当たりGDPも中国の2倍弱となった。
日本にとっても今や大きなマーケットで、東アジアと並ぶ世界経済の成長センターとなっている。
  - 貧困・格差問題から、ベネズエラ、ボリビア、エクアドルなど、急進的な左派政権も誕生している。
  - 日本に於ける注目度は未だに低いが、政治的安定、好調な資源輸出、経済成長により、国内消費も増え、中産階級も増えて来ている。
  - 政治的安定、経済的発展から、国際的地位も向上しており、G20、G6、WTOなど、色々な分野で存在感が高まっている。
メルカトル図法では、南米は北米の2/3と心理的遠近感があるが、実際には同じ大きさである。
  - 政治的安定から、安全保障上の問題がなくなり、新聞に載るニュースも減っている。
(これは、アメリカでも同様。)
  - 日本と中南米のビジネスも活発化しているが、企業トップは未だに80年代、90年代の痛みを覚えている。
  - 各国共通の課題(治安の悪さ)
人口10万人当りの殺人被害者は
日本 0.4   南ア33.8
米国 4.6   中米は高く、ベネズエラは44(首都カラカスは122)
一般治安は非常に悪く、ジニ係数(社会・地域格差の指標)は50ポイント以上と非常に高い。
  - 中南米は、日系人が100万人と多いこともあり、世界で最も親日的で、日本にとっては近隣諸国のような歴史的な負の遺産がない。
若者はマンガ、アニメなど日本のポップカルチャーに対する憧れも強い。
資源・食料外交の最前線として重要で、国際場裡でもっと協力し合い、格差是正にも着目、支援を行なう必要がある。
   
  2. 中南米とスペインの関係
  - 最新の統計では、ブラジルのGDPは、2011年、世界6位にて、イギリス、イタリーを超えている。
スペインは12位(2008年は8位だった)に低下。
  - 旧宗主国スペインの存在感は大きく、歴史・経済文化を共有しており、毎年、20数ヶ国の首脳が参加、イベロアメリカサミットを開催、絆を深めているが、スペインは国王が出席している。
  - 言語が共通ということもあるが、特にサービス産業での影響力は強い。
  - 世界的な製造業、ブランドがないため、日本ではスペイン企業が余り知られていない。Zaraは世界的なアパレルメーカーだが、スペイン企業だと知っている人は少ない。
  - 代表的な世界企業としては、Telefonica(通信)、Repsol(石油関連)、ENDESA(電力)、Banco Santander(銀行)などが挙げられるが、通信、銀行といったサービス業が席巻しており、日本にとっては、ライバルでもクライアントでもない。
スペイン経済は停滞しているが、スペイン企業は中南米で稼いでいる。
  - 日本の製造業は海外でも強いが、サービス業は弱く、世界に冠たる大企業のNTTドコモも海外展開は殆どなく、水のサービス、電力もしかりで、製品の場合は、良ければ売れるが、サービス産業の場合は、日本の謂わば文化を持って行き、相手国の言語で説明しなくては売り込むことは出来ない。
  - セルバンテス文化センターは、スペインだけの文化ではなく、スペイン語の文化を世界中に広める役割を担っている。
  - スペインで一番強いブランドはReal MadridとFC Barcelona(バルサ)であろう。
   
  3. スペイン・サッカーの話題
  - 私はAtletico de Madridのファンである。
2006・5〜2008・8の2年4ヶ月公使を務めたが、着任後直ぐの6月にドイツでのワールドカップを観戦、駐在中、通算48試合を観戦、サッカーを仕事としていない人間としては非常に多いと思う。
  - スペインは現在、黄金時代を迎えており、2008年EURO、2010年WC、2012年EUROと優勝、史上初めてEURO、WCを三連覇した。
  - スペインは、地方性が特に強い国で、Real Madridはフランコが寵愛したことでも知られており、一方、バルサは自治を押さえられていたカタルーニャのシンボルであり、MadridとBarcelonaの対抗心は非常に強い。
  - Madridには、現在、一部リーグ所属の4チームがあり、夫々、スタジアムを持っている。
Real(Estadio Santiago Bernabeu)お上りさんが多い。
Atletico(Estadio Vicente Calderon)下町、スペインでも一番熱い。
Rayo Vallecano(Estadio Teresa Rivero)
Getafe Club de Futbol(Coliseum Alfonso Perez)
  - サッカーに関連した色々な表彰があるが、ある時、パブリシティーの表彰式に招かれた。AtleticoのCMが一位となったが、内容は、内戦最中の1936年、同じクラブの敵味方が山中で出会い意気投合、「Vicente Calderonで又会おう」と言って別れるシーンで、クラブへの愛は戦場での敵味方さえも超えてしまう程強いというもの。Vicente Calderonに行くと、庶民的で熱いファンが多く、親子代々のサポーターも多い。
  - 日本人選手でLa Ligaで活躍している選手は殆どおらず、現在は、Sevilla Atleticoの指宿洋史選手(17歳で渡西)ぐらいで、福田健二選手がUnion Deportiva Las Palamas 在籍時に激励に行ったが、結局、Primera Divisionには行けなかった。
  - 日本の大手メディアはスペインに特派員を置いておらず、パリからカバーしていて、中々記事が入って来ないが、サッカー・ライターは何人もいる。
「サッカー馬鹿 海を渡る:リーガ・エスパニョーラで働く日本人」(2009年、河内イオ著)によれば、ライター、カメラマン、取材コーディネーター、指導者、代理人、通訳、道具係など日本人が大勢働いている。
そんなに需要があるか分からないが、スペインでは、サッカーに対する愛情があれば、外国人でも受け入れるという優しさがある。
  - 佐伯夕利子という、2003年、日本人および女性として初めてNIVEL III(JFAのS級ライセンスに相当)を取得した女性がいる。リーガ・エスパニョーラ3部(日本流に言うと4部)「プエルタ・ボニータ」の監督に就任する。リーガ・エスパニョーラのトップチームの監督に就任した日本人、そして女性としても彼女が初めてである。その後、女子トップチームのスカウティング・育成部門、女子Cチーム育成副部長を歴任している。
  - これから将来、活躍を期待される若者を2人紹介したい。
@宮川類
2007年、10歳の時にAtleticoと契約、母親(時には祖母)と一緒に暮らしながら修行、今は別の、自分(15歳)より少し上のチームで試合をしている。
A久保建英
今、話題なのは、11歳の久保君で、FCバルセロナのカンテラ(年少チーム)に入団、最近、日本のマスコミでも取り上げられた。メッシもアルゼンチン人だが、カンテラで育った。
  - いつの日か、この2人が日本人代表になるのではと期待しており、特に宮川君とは親しくしているので、「あの時、Vicente Calderon で会ったね」と言えることを願っている。
   
   
  (質疑応答)
  (1) 「カタルーニャ人は独立したいと主張しているが、中南米では同じ言語でビジネスをしているというアドバンテージがあり、一方、新聞アンケート等によれば、サッカーでは、リーガ・エスパニョーラに残りたいと言っている。独立したら、中南米でのビジネス上も支障あるとも思われ、彼等の行動は理解出来ない。彼等の本心は、中央政府に対し、ある程度の自治権を得られればということではないか?」
 
-
その通りかも知れないが、彼等の心情は日本人には分かり難いのではと思う。カタロニア語が第一公用語だが、スペイン語を話し、分かるので、中南米とのビジネスで困ることはなく、又、スペイン経済では、日本達が中心で、豊かな自分達が独立した方が得だと思っている。
リーガ・カタルニアとして独立するとは思わないが、独立した場合は、同じリーガの中で戦う仕組みを考えるのではと思う。
     
  (2) 「本年初にペルーに行ったが、中国向け輸出増で、歴史始まって以来の好景気だと言われた。昔は、中南米は米国に干渉されていたが、最近は、米国への依存度が減ったのか、或いは、対イラク戦争等で米国の余裕がなくなったのか?」
  - 中国向けを中心とする好調な資源輸出により経済が好調なのは事実である。
  - 殆どの国々で民主化が定着、中南米は徐々に纏まって来ており、ベネズエラを中心 とする、反米左派のALBAグループの存在はあるが、直ちに脅威ではない。     米国の余裕がなくなったのではなく、米国にとって安全保障上の問題が殆どなく なったと言える。 中南米諸国と米国の関係は、依然として密接で、より現実的、ビジネスライクなものとなって来ている。
注目すべきは、メキシコ、コロンビア、ペルー、チリの太平洋同盟で、米国だけでなく、アジアを含めた、より広い貿易、投資を求めての動きである。
     
  (3) 「スペインはサービス産業に強く、中南米では、言語・文化の強みがあることから、日本企業もスペイン企業とのタイアップを模索して来たが、実際には難しかった。最近は、可能性が出て来たか?」
  - 具体的には承知していないが、最近、2-3件の事例が出て来たと聞いている。スペインの製造業でも、再生可能エネルギーの分野では進んでおり、タイアップの可能性もあるのではないか。
     
  (4) 「今も、ベネズエラ関連の仕事をしており、アルミ精錬撤退等にも関わっている。今日は、その関連の話は聞けなかったが、サッカー好きが高じてスペインに留学した程で、今日はサッカーの話を聞けて良かった。しかし、山田局長は何故そんなにサッカーが好きなのか?」
  - 特に理由はないが、スペイン、中南米のみならずサッカーはポピュラーで、サッカーの話をすれば仲良くなれると思い、1982年に研修で行ったスペインで観戦して以来、徐々に嵌って行き、1990年のイタリアWC以外は、1986年(メキシコ)、1994年(米国)、1998年(フランス)、2002年(日韓)、2006年(ドイツ)は、駐在、出張等により観戦、2010年の南アフリカ大会では、偶々、アフリカ担当参事官であったことから、非公式南ア応援会長を務めた。
  - スポーツは国を超えて人を結び付ける力を持っている。しかし、中南米局長の立場としては、Neutralidad completa(完全な中立性)を守るようにしている。
   
   
2) 概況コメント
    山田局長には、3年前の2009年3月30日の第42回定例会でもご講演頂いており、「日本発ポップカルチャーとスペインの若者」という、従来とはやや異なったテーマで、誠に興味深く拝聴した。伝統文化・芸術に加え、マンガ・アニメ等のポップカルチャーが文化外交の強力なツールであることを認識したが、今回は、経済成長著しい中南米情勢、スペインと中南米の関わり合い、そして、スペインのサッカーという流れでお話し頂き、スポーツ外交の重要性に付いても再認識、本年最後の定例会を飾るに相応しい講演であった。講演後は、スペインワインと共に話が弾み盛会となった。
     
    以上   
(文責 清水)




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