第34回定例会(第9回総会)

日時:2007年7月20日(金)18:30~21:30

場所:サロン・ド・テ・ジュリエ

参加者:30名

1)総会
2)マヌエル・サンチェス 氏 講演
3)概況コメント

1)総会

    正富副会長を議長に選出 以下議案が承認されました。
    1号議案 2006年度活動報告及び決算報告
    2号議案 2007年度活動計画及び予算
        (定例会活性化のため年5回開催を目標とし これに伴い参加費の見直しも視野に入れることとする)
    3号議案 役員会役割分担変更(副会長 正富氏から清水氏、事務局 碇氏から大濱氏、会計 佐藤氏から田林氏)

2)講演

「スペイン人の目から見た2008年サラゴサ国際博覧会」(スペイン語)
マヌエル・サンチェス 氏

    来年6月14日~9月14日まで「水と持続可能な開発」をテーマにスペインサラゴサ市で93カ国参加の国際博覧会が開催されます。
    日本政府はいち早く参加を決定、経済産業省主導のもと準備を進める一方、日本人観光客はじめ各種視察団の日本館来訪を期待し、その情宣に努めていますが、まだ知名度が低い現状です。
    そこでPR支援を兼ね、日本館アドバイザーを務める 日西クラブ会員マヌエル・サンチェス氏にスペイン人の視点でサラゴサ万博を語っていただくこととしました。
    サンチェス氏は、日本人以上に正確な日本語力と日本についての深い知識、経験更に経済、文化各界に幅広い人脈を有する稀有なスペイン人として夙にその名を知られていますが そんな特性を存分に発揮し概略以下のような講演をされました。
講演概要
    1. 東京オリンピック、大阪万博とスペイン

  • 1964年の東京オリンピックと1970年の大阪万博の両イベントを、自分は日本に居て経験することが出来た。
    スペインは東京オリンピックに参加したが、目立つ存在では無くメダル獲得の望みも全く無かった。ただ二つの思い出がある。
    一つは、当時24歳のドンフアン・カルロス皇太子が 密かに練習し一人でレガッタ競技に参加していたこと。これが国王の始めての来日で2回目は新婚旅行。
    ちょっと恥ずかしい思い出は、スペインの柔道選手が審判の判定を不服とし、その場で審判を殴って帰国してしまったこと。

    スペインは、大阪万博には参加しなかった。 当時スペインにとって日本の存在はそれほど重要でなく、不参加でも問題なかった。
    その代わり 万博の直ぐ後 東京と京都でプラド美術館展を開催し、約35万人の来場を記録している。若し万博会場に場所を設け、展示したら入場者は数百万人に達していただろう。
    今や スペインは、国際イベントに常に真剣に取り組んでおり、日本の真面目なやり方を模範例としているが、当時のスペインの国際イベントに対するスタンスはこの程度のものだった。

    2. 大阪万博と愛知万博

  • 1970年当時 日本はまだ海外旅行が自由でなく、人々は白黒テレビの人気番組「兼高かほる の世界の旅」を観て外国の様子を知るような状態だったので、大阪万博は海外旅行疑似体験の場であり、来場者は外国旅行気分で各国パビリオンめぐりを楽しみ 記録的な入場者数に達した。

    一方 愛知万博はこれまでの万博の概念を一変させる画期的なものだった。
    19世紀以来万博は大阪万博も含め、各参加国が自国の製品、技術、国力、魅力を謳歌宣伝し競う場になっていたが、愛知万博は「自然の叡智」と言う具体的表現の難しい、思索的テーマを掲げ、専門家や企業家の人々ではなく、家族や一般の人たちが集いそこで新しい知識、問題意識を持つ場に万博を変えたのである。

    3. 2008年サラゴサ国際博覧会

  • テーマ:愛知万博から派生した「水と持続可能な開発」
    水はスペインにとって大きなテーマである。各自治州の権益、政党の違いが絡み合い水の配分を巡る調整は複雑困難な問題だからである。
    ただしスペインで水問題解決の成功例もある。
    嘗ては砂漠で最も貧しい地といわれたアンダルシアのアルメリアは水の合理的な使用を研究開発の結果いまや最も豊かな土地に変わり、その水に係わる技術水準はイスラエルに匹敵するほどと言われている。
    従ってこの万博から参加国は、水に関する多くの経験、教訓を学ぶ事が出来よう。
    サラゴサ万博の知名度は、スペイン国内で可なり普及しているが、そのテーマについてはインテリ階級の人達でもまだ知らない人が多い。
    今後更なる広報に努める必要があろう。

    開催地サラゴサ
    人口60万の中都市。ビルバオ、バレンシア、マドリッド、バルセロナの四角形の中央に位置し、北に向かうと直ぐにフランスに入る地理的条件に恵まれているところから、近年一大物流基地として発達。サラゴサ大学が米国MIT共同の物流講座を設けているほど。失業率ゼロ、老人が懐かしむ昔のスペインの治安の良さが保たれており人々は解放的で極めて親切である。

    4. 日本館

  • 万博参加成功の鍵
    先ず開催国が参加国に親近感を持っていること。
    日本外務省が実施した調査によると、スペインの日本に対する関心は強い。
    一方スペイン側の調査でスペイン人が親近感乃至賞賛の念を持っている外国の一番はメキシコ、二番イタリアそして三番目に日本が来ている。

    次に パビリオンの企画運営には 開催国の人達の意見を聞くことが重要。
    先の愛知万博では、スペイン館の運営に関し日本人有識者の小委員会を設けた。
    (メンバー 堺屋氏、林屋大使、料理の服部氏等)当時のスペイン側高官は、「何故日本人の意見を聞く必要があるのか」とこれに反対したが、この委員会の参考意見がスペイン館成功に寄与したものと満足している。
    今回の日本パビリオンの運営についてもスペイン人意見が大切だ。例えば万博総責任者の経済産業省宮本氏より、ナショナルデイのイベントで鯨をあしらったものを使うことに付き相談を受けたが、捕鯨反対デモが日本大使館前で繰り広げられている光景を見ているのでそれは相応しくないとアドバイスし、無用な摩擦を事前に避けさせることが出来た。

    日本館の管轄官庁と審査方法
    経済産業省が管轄。(スペインの場合は万博公社SEEIが総ての万博を担当する)
    館の基本計画はコンクールで5社提出のプロジェクト案が審査された。審査方法は、企業名を出さずに初めに日本在住スペイン人達が評価し次に関係官庁が審査(前者の評価に70ポイントを与え、スペイン人意見を重視)その結果(株)大広が選ばれた。
    その後、経済産業省側の担当者交代が相次ぎ、基本計画案は、変更に次ぐ変更で35案が9ヶ月に亘り検討された。 総責任者も漸く4月初め愛知万博とスペイン経験を活かし宮本氏が任命された。

    日本館
    日本館を入ると3面スクリーン、浮世絵をバックの江戸時代、きれいな水の流れに沿って人々の水との共生の知恵と技術、畑を潤し山に入り水源が滝にいたる水の恵みへの感謝を15分の映像で伝える。
    江戸時代の昔から受け継いだ日本人の自然の叡智との共生は、他の国々に水問題解決のヒントを与えてくれるだろう。
    そして日本館全体を統一する合言葉は、日本政府から出た「もったいない」
    入館者の日本語ボキャブラリーには、この「もったいない」が新たに加わるだろう。

    日本館イベント
    万博会期中のイベント活動についてもコンクールで別途審査が行われ、自分が顧問の大広は選ばれなかったが、基本的には スペインにある日本の資源と日本にあるスペインの資源を事前に旨く結べる内容のものが良いと思う。
    スペインにある日本の資源では墨絵、生け花、書道、漫画などが上げられる。
    特に日本の漫画専門店は26店舗もあり、マニアの集まりも盛んな様子。
    一方日本にあるスペイン資源は、この日西クラブもその一つ、300以上あるスペインレストラン、スペイン語学科を有する19大学とスペイン語講座のある63の外国語学校、129の会員を擁する日本フラメンコ協会、13の姉妹都市、29の日本進出スペイン企業など。
    スペインにある日本資源を更に探してみると日本文学、美術、歴史etcテーマの博士論文は35、サラゴサ大東洋美術科の元主任教授の収集の結果、スペインで最も多くの浮世絵を有するサラゴサ私立美術館等、まだまだ隠れている日本資源があるようだ。
    日本館のイベント候補に何がなるのか分からないが、万博のテーマを真面目に考えそれに取り組んでいるのは日本館であり、他のパビリオンは相変らず自国製品や観光プロモーションのものが多いようだ。
    当初よりスペイン人の間では日本館への期待が強く、質が高くテーマに相応しい内容を提示する日本館には長蛇の列が出来るだろう。

    5. 質疑応答

    1. 参加国リストに米国、英国、カナダ、ブラジルが欠けているが参加の可能性は如何?
    1. カナダは政権交代時期にぶつかったのでまだ分からない。米国は民間ベースならともかく、国の予算支出を伴うものは基本的に渋る。また現スペイン首相と米国大統領との微妙な関係から見れば難しい。ブラジルは皇太子の訪問で万博も話題になり参加するだろう。チリも参加する。英国は前回も最後に参加を表明した経緯あり。

3)概況コメント

    当初マヌエル・サンチェス氏が講師なので講演は日本語の予定でしたが、突然Carriedo大使が参加されたので急遽スペイン語に変えました。
    然し分かり易いスペイン語と、豊富な経験と知識に基づくユーモアを交えた講演は瞬く間に聴衆を魅了しました。

    続いてCarriedo 大使が、サンチェス氏の日西両国の親善を謳った講演への謝意と共に乾杯の音頭をとられ 懇親会に移りました。
    そこかしこに幾つも出来た談笑の輪に、田中会長の誘導でCarriedo 大使も気さくに加わり、終了時間間際まで参加者一人一人と親しく言葉を交わされ 将に素晴らしい懇親の場となりました。

    以上
    (文責 澤木)