第40回定例会

日時:2008年9月12日(金)19:00~21:30

場所:カフェ・ジュリエ

参加者:29名

1)ルイス・フェルナンド・デ・セゴビア氏 (駐日スペイン大使館公使) 講演
2)概況説明

1)講演

    ルイス・フェルナンド・デ・セゴビア氏 (駐日スペイン大使館公使)
    「日西の社会・文化・芸術について思うこと」
  • 日西クラブでは、スペイン大使館の大使、公使、参事官が新たに着任される都度、例会で講演をして頂いており、今回はアルバ公使の後任として昨年4月着任されたセゴビア公使にお話しを伺うこととした。
    セゴビア公使は 1947年マドリッドに生まれ 職業外交官として活躍 前任地ベルギーでは文化担当公使参事官、海外赴任地はブルガリア、ハンガリー、キューバ、カナダ、スイス、外務省本省では経済局長等を歴任した。
    講演概要以下の通り。
講演概要
  • 黒田教授は、日本スペイン法研究会会長として、最近も『現代スペイン法入門』を同会・サラゴサ大学法学部・Nichiza日本法研究班の共著で上梓するなど、この道の権威としてご活躍中ですが、昨年4月より、一年間スペインにご滞在、現地の大きな変化に直に触れたご自身の体験を踏まえた形で、最近のスペインの状況、特に「男女平等法」、「歴史記憶法」(フランコ時代に迫害を受けた人達の復権・補償を目的としたもの)に付いて、分かり易く説明して頂いた。
    1.自身のプロフィール

  • 先ず個人的なプロフィールから始めたい。自分は早い時期から 外交官になろうとの気持ちに目覚めていた。というのは家系に外交官になったものが色々いるからである。旧くは19世紀、1860年代身内にフィンランド、ロシア駐在領事になったものがいる。当時は今ほど職業外交官的なものではなかったが、彼は1870年にロシアから開国間もない日本へ旅をしている。
    新しいところでは、叔父が1942年駐日スペイン大使館武官に任命されている。当時 両国とも厳しい状況にあり、スペインは内戦(1936~1939)が終結したばかりの時代。赴任にあたり、先ずCadizをスペイン船で出発、ブラジルへ向かいそこからフィンランド船でフィリピンへ行き、更に日本の赤十字交換船で漸く横浜に到着するという3ヶ月の長旅だった。叔父は、スペイン政府の親書を託され、ジェームスボンドのような役割だったとのことだ。日本ではすぐに使用人つき邸宅を引き継ぎ、そこに叔父夫婦(母の姉)、娘(従妹)祖母の四人の暮らしが始まった。日本語も学んだようだ。東京大空襲で家を焼失したが、幸い軽井沢の山の中にいたので難を免れ、その後1953年パリ駐在となり日本を離れた。
    一方 父は、ユネスコ職員だった。
    このような環境なので 家では親戚が集まると日本や日本文化がいつも話題になり、叔父夫婦などは回りに知られたくないことは、お互いに日本語で話し合っていたようだ。
    自分も夫々の海外任地では日本の外交官と親交を深める一方、日本の骨董趣味があるので、冷戦時代のブルガリアでは掘り出し物を見つけ、ジュネーブでは日本のものが多い博物館めぐり、パリでは日本館、留学時代のロンドンでは日本企業寄贈の漆展示室等を楽しんだ。
    前任地ベルギーでは文化担当であったが、日本勤務のオッファーがあり喜んでお受けした。
    2.日西の特徴と類似性

  • これが今回の話のテーマではあるが学校の講義ではないので、思いつくまま感想を述べることとしたい。
  • 類似性
    日本は、開国早々総てに英国をモデルとしたので、今も車は左、人は右側通行になっているほどだが、スペインと共通するものが多々ある。
    例えば、日本と同様 仕事帰りに仲間同士でチョット一杯の習慣は、ビルバオやマドリッドのバールでよく見かける風景。
    美術、芸術分野では、スペインの美術品を集めた須磨コレクションを展示する長崎美術館を訪れると、須磨大使の色彩感覚、芸術センスにスペインと共通するものを感じる。
    スペインがイスラムから学んだ皮細工の技術は、コードバンとなって日本に根着いている。
    お互いに海洋国。海に向かっての挑戦。盛んな漁業。海産物料理と共通している。
    先日 函館へ行ったとき、ビルバオで修行したとうシェフのレストランで食べたのは、総て日本の食材を使っての見事なサンセバスチアン風料理だった。
    このような共通点がある一方、お互いに補完関係というか 相手から学ぶべきものもある。
  • 日本から学ぶべきもの
    礼儀正しさ、親切、心の籠もったサービスの素晴らしさ。大きなホテルだけでなく地方の旅館や温泉宿に至るまで、まるで幼児に対するように至れり尽くせりのサービスだ。
    スペインは第2位の観光大国だが、サービスの点ではまだ充分ではない。
    次に時間の正確さ。列車便の時刻の正確さは驚くべきもの。 スペインでは最近AVEがマドリッド、バルセロナ間も開通。AVEに限って言えば発着時刻は正確だがその他の面では可なり大雑把だ。
    サラゴサ万博が閉幕したが、会期中日本の皇太子殿下が水の管理について素晴らしいスピーチをされた。水のリサイクル、水の管理、環境保全面で多々学ぶべきものがある。
  • 日本の少し困った点
    日本の金融部門は閉鎖的なのだろうか、銀行の規模は世界一を誇り多数の職員を擁しているにもかかわらずATMの数が極めて少ない。スペインではどんな街角にもATMがあり24時間いつでも引き出し可能、日本は数が少ないうえ使用時間が限られている。先日も良い骨董を見つけたがATMが無く、止むを得ず その場の友人に立て替えてもらったほどだ。
    次に航空機部門。JAL,ANAにAir busが一機もない。Air Busの市場シェアは北米52%、欧州62%、日本を除くアジア55%、中近東84%だが日本市場は僅か4%である。
    シンガポール航空の日本便に最新のAirbus A380が就航しているが、実に快適で一定高度に達すると乗客は立ったまま 飲み物を楽しんいるほど安定している。
    日本は 依然としてBoeingの独占なのは特別な理由があるのだろうか。この点は聴衆の皆さんのほうがよくご存知なのかもしれない。
    いずれにせよ 日西は共通のものをベースに良きsimbiosisの関係といえよう。
    3.質疑応答

  • サラゴサ万博の評価について
    目的を達成し成功だった。愛知万博やセビーリャ万博のようなユニバーサルな万博ではないので参加国数は多くはなかったが、余り知られていないサラゴサを世界地図の中で示し知名度を上げることが出来た。また 日本館は最高だった。
  • 今後の日西文化交流イベントについて
    Kirkpatrick文化担当参事官が駐韓国スペイン大使館のナンバー2で転出したので後任の文化担当が中心になって企画している。国賓としての国王来日、清水寺でのコンサート、サラマンカ大学での日本学講座、Santiago de Compostela での日西フォーラム、セルバンテス協会で秋のイベントとして各種講演、映画、舞踊が計画されている。
  • 直行便再開の可能性について
    JAL,ANAの可能性もあるのではないかと思うが、IBERIAとBAとの統合が実現の場合IBERIAは得意分野の南米路線を分担する事になろう。近々何らかの動きがあるものと思う。
    サンフランシスコ号漂着400周年記念事業について現在メキシコとスペインが共同で記念事業を実行すべく、メキシコ大使と接触している。

2) 概況説明

  • 職業外交官としての長い経歴と誠実さの故か、聴衆の質問すべてに対し真摯に答えてくださる態度に一同感銘。一方日本と浅からぬご縁の公使プロフィールを伺い、皆特別の親近感を抱き公使に接触、公使も積極的に夫々の話の輪に加わり、会の終了間際まで歓談は続く良き日西親交の夕べとなった。
  • 以上
  • (文責 澤木)