第43回定例会 & 第11回総会

日時:2009年7月29日(水)18:45~21:30

場所:サロン・ド・テ・ジュリエ

参加者:34名

1)総会
2)吉川 元偉氏 講演
3)概況説明

1)総会

    清水副会長を議長に選出、活動報告・計画を澤木副会長が説明、会計報告・予算を田林理事が説明、以下議案が承認された。
     ・第1号議案 2008年度活動報告及び決算の承認
     ・第2号議案 2009年度活動計画及び予算の承認

2)講演

    吉川 元偉氏 (アフガニスタン・パキスタン支援担当大使、前スペイン駐在日本国大使)
    「スペインから帰国して」
田中会長から講師紹介(詳細略)あり、最近のスペインについて、資料「最近のスペイン情勢と日・スペイン関係」を基に、色々な角度から興味深いお話をお聞きした。
講演概要
    帰国後の印象として、日本でのスペイン関連ニュースは、①スポーツ、②旅行、③グルメ分野が圧倒的に多く、この三つしかないとも言える。今日はニュースに載らない政治・経済のお話をしたい。
    (スペインの政治情勢)

  • 1975年にスペインに留学、30年後に大使として赴任したが、この間の首相  はアドルフォ・スアレス、カルボ・ソテロ、フェリペ・ゴンザレス、アスナール、サパテロ(現在2期目)の5人のみで、しかも、全員存命(カルボ・ソテロは2007年死亡)、選挙で選ばれていないアドルフォ・スアレスを除くと、4人の首相で夫々10年近く政権を担当している訳で、スペインの政治は非常に安定していると言える。一方、その間の日本での首相は15-16人で、又、私の駐在していた間に首相は3人変わっており、正に日替わりメニューみたいである。
  • 2大政党政治の一つの特徴として、イギリス等に見られるように、政策が非常に似て来る。繰り返せば繰り返すほど、違いは殆ど無くなって来る。
    EUが中心のヨーロッパでは、似て来るのは必然である。経済政策は、共通通貨がある為、基本的にはブラッセルで決定され、各国がマクロ経済で触れるものは殆ど無く、ミクロの世界も補助金とか大体、規制されていて、独自に出来ることは少ない。
  • 現在、スペイン人のハビエル・ソラナがEU外務大臣を務めているが、外交政策も、かなり多くの部分はEUで統一歩調を取っている。しかし、対イラク戦争では、自由討論・投票の形を取った為、ブッシュ政権のイラク政策を支持したイギリス・スペインと、真っ向から反対したドイツ・フランスということで、ヨーロッパは真っ二つに分かれ、その結果、ヨーロッパ全体の外交に於ける影響力が、アメリカとの関係に於いて非常に低下、その後のブッシュ政権に対し発言力を大きく低下させた。
    この反省から、オバマ政権になりそうだと見えた途端に、米国との関係修復に各国ともに急激に乗り出した。スペインも例外ではないが、スペインの場合は、それに加えて悪い条件があった。
  • アスナールは、ヨーロッパでの中堅・上位を目指すという伝統的な外交政策ではなく、米国との関係に於いてイギリスに次ぐ地位を得て、国際的な地位を高めるという外交戦略を取り、ブッシュのイラク戦争を強く支え、派兵もした。
    しかし、アトーチャ駅でのテロ事件の結果、追い風を受けて、野党の社会党が政権を取り、サパテロは思い掛けなく首相になった。サパテロは、終にブッシュからホワイトハウスに招かれなかった唯一のヨーロッパ首脳であり続けた。
    ブッシュが怒ったのは、①選挙公約とは言え、米・英に事前相談なく撤兵したこと、②同盟国なのに、他国にも撤兵を呼び掛けたことによる。
    このブッシュ大統領とサパテロ首相の仲違いの為、首脳間の対応がないまま、ライス国務長官が来西するまで、関係修復に非常に時間が掛かった。
  • 米国が民主党オバマ政権に変わり、サパテロ政権には良かったと思うが、サパテロ首相が目指しているのは、①「米国との関係修復を図りたい」、②「外交の主軸をヨーロッパの中に置き、欧州内での一定の地位を占めるような国になりたい」、③「国際的な地位を高めたい」(フランコ時代があった為、国連加盟が遅れる等、国際舞台に出て行くのに時間が掛かったが、これを払拭したい。)ということである。
  • 実施して来たことを見ても、アフガニスタンには830人派遣(8月の選挙支援の為に、一時的な追加派遣も決定)、レバノンには1,100人、コソボにも500人派遣する等、軍事的な貢献をNATOの一員として強力に行っている。
    それとバランスを取る形で、ODAも増額しており、2008年実績では第7位の67億ドル(GDPの0.4%)にて、第5位の日本の94億ドル(GDPの0.2%)に肉迫、経済協力の大国、ヨーロッパでの中核的な存在となりつつある。
  • (スペインの経済情勢)
  • 2007年までは、スペイン経済は破竹の勢いで拡大、成長率、インフレ抑制、財政黒字、何れの指標を取っても、ヨーロッパの優等生であった。1986年から2007年までの20年間で、一人当たりGDPは3倍になった。しかし、2007年後半から急激に失速、2009年度経済成長率は政府見通しが▲3.6%、OECDが▲4.2%にて、失業率は今や18%となっている。
    スペイン経済がここまで拡大したのは、内需、特に住宅建設と、可処分所得の増えた部分が全て消費に回り、消費が又、投資を呼ぶという好循環にあったことによるが、住宅需要が止まった途端、失業が増え、消費が冷え込み、経済が減速するという悪循環に陥っている。
  • スペイン経済は、内需により拡大して来たが、内需の中心はテクノロジーではなく、非常にプリミティブなもので、住宅建設とそれに伴ったインダストリー、後は消費の部分、その中心は自動車・二輪車であり、それもスペインのメーカーではなく、ドイツ、米国、日本のメーカーによるもので、皆一様に冷え込んでおり、厳しい状況に追い込まれている。
  • 対応策として、個人所得税及び付加価値税の還付、地方投資基金等の施策を打ち出しているが、一番効果が出ているのは車一台に付き、2,000ユーロという直接補助金である。ドイツとスペインでは、自動車業界にとってプラスになっている。
  • そもそも、スペイン経済の弱点は、世界に通用する強い技術力がないことである。
    従って、世界経済が回復基調に入った時に、スペインは、かなりの時間差をもって恩恵に与れることになろう。
  • 住宅を支えていたのは、①豊かになったスペイン人のセカンドハウス、②英、北欧等ヨーロッパ人のセカンドハウス、③人口の10%を占める移住者450万人の住宅であったが、③の移住者は経済のダメッジを最も受けており、回復は難しい。
    移住者は1/3が伝統的な南米(エクアドル、コロンビア、ボリビア等)1/3が東欧(ルーマニア、ブルガリア等)、1/3が北アフリカ(モロッコ等)からの移住者である。
    南米人はレストラン、ホテル、家政婦、ルーマニア人はブドウ畑、オリーブ畑での労働者、モロッコ人は3Kの現場労働者がメインである。
    失業手当は2年あり、スペイン人の若者は大家族制に守られ、何とか問題なく生活しているが、移住者には行き場がなく、社会的に非常に難しい立場にある。
  • スペインは欧州では最長寿国で、人口構成は日本に似通って来ており、世界経済2位の日本と8位のスペインが同様の状況にある。これまでは、社会保険も移住者に助けられて来た面もあるが、このスペイン経済の牽引車でもあった移住者が今や負担になり、悪い循環に陥っており、スペイン経済も、ここ数年間は苦しい状況が続くこととなろう。
  • (日本とスペインの関係)
  • 世界第2位と第8位の経済大国間の関係にしては、直行便がなく、投資も少なく、極めて物足りない状況下、何とか改善すべく努力の結果、下記成果があった。
  • (1)「就労査証」取得に、従来6ヶ月掛かっていたが、40日間に短縮出来た。
      40日間というのは、日本でのスペイン人に対する発給が40日間であり、相互主義に基づいたものである。
      もし、関連の企業で例外があれば、お申し越し願いたい。
  • (2)「日西社会保障協定」が昨年署名され、日西両国会でも承認、二重払いが防げることとなったが、
      経団連試算によると、日本企業全体で年間20億円の節約効果があると言う。
      条約発効後、具体的な細目決定が必要で、厚生労働省とスペインの社会保障省の間で作業中にて、
      来年には実施となる見込みである。
  • 「最近の主だった動き」
  • 日系企業の人事では、現地化が急速に進んでおり、主だった日系企業のトップは現地人が登用されつつある。水曜会に加え、共通語をスペイン語とするスペイン人社長によるSHACHOKAIが一昨年発足、日本人会20周年記念事業の桜植樹プロジェクトでも、最大の寄付者はBROTHER(日本人はいない)で、電話一本で数十万円をOKした。
  • 科学技術の関係では、日本の技術を使って経済成長モデルを変えたいとの考えから、従来の文部省から切り離し、「科学イノベーション省」が新設され、この2年で予算が伸び、二国間協力も進展しつつある。
  • 直行便実現は難航、更に状況は悪くなっており、大きな課題である。
  • 「この一年の主な出来事」
  • 「サラゴサ万博」では、74万人入場、皇太子殿下の講演は素晴らしかった。
    日本人会会報にも全文掲載した。日本はデザイン部門での金メダルを獲得した。
  • ファン・カルロス国王、ソフィア王妃が国賓として2回目のご訪日を果たされた。
  • マドリードに国際交流基金の事務所開設が決まった。(市役所所有の建物内に1フロアーを無償で提供された。)
  • セルバンテス協会東京事務所の開設。
  • セビリア名誉総領事の任命。
  • 引き続き、日西関係強化に取り組みたいと思うので、ご支援頂きたいし、ご注文、ご希望があれば、気軽にご連絡願いたい。

3) 概況説明

  • ご帰国早々で超ご多忙の中ご講演頂いたが、フレッシュで鋭い観点から、スペインの現状、日西関係を分かり易く解説頂き、非常に興味深い講演であった。講演後も、飲み放題のワインで話も弾み、楽しい会となった。

以上
(文責 清水)